物語の島
蝶への想い(ウムイ)
再生と永遠の願い
奄美では、ハブラ(蝶や蛾)は逝った人の霊魂だと信じられている。島の人々は脱皮する力をもつ蝶の姿に再生し、永遠に生きたいという思いを託した。
三角形は蝶をイメージした霊魂の象徴で、守護力を持つと考えられた。子どもの着物は三角布をつなぎ合わせて縫うか、三角布を背あてにした。また、サンガツサンチ(三月三日)に作られる蓬餅も三角形に象(かたど)って願いを込めた。
琉球王朝時代のノロ(集落の祭祀を司る)のハブラギン(三角布を張った胴着)や三角布の付いた首飾りや髪飾りが、神聖さを保った。新作民謡のアヤハブラ(綾蝶)節は、海を渡る蝶に待つ側の思いを重ねた。
蝶への思いは、自然の中に神を見る観念に通じる。人々は、先祖の霊を敬い、五穀豊穣や子どもの成長を願って祈ることを忘れない。
写真・解説/ホライゾン編集室