物語の島

奄美の島々の民話

喜界島

竜宮の嫁

喜界島の民話『竜宮の嫁』

昔、貧乏な花売りの若者が売れない花を抱えて浜辺を歩いていたが、それをネリヤの神様にあげようと、海に投げ入れた、すると、海のなかから亀があらわれて、お礼にとネリヤ(竜宮)につれていってくれた。若者は竜宮の娘と結婚して夢のような日がたち、二人して浜辺に帰ってくると、年がすぎていた。竜宮の嫁は亡くなった母を生き返らせ、打出の小槌で家や倉、米を出して分限者となり仲良く暮らしていた。これを知った殿様が、無理難題をいって竜宮の嫁を横取りしようとしたが、すべて嫁の知恵で解決。最後に小さな箱から飛び出した小さな侍たちが、殿様たちに切りつけた。するとみるみる大川ができ、一人残らず海に流されてしまったということだ。

あもろうなぐ(天降り女)

昔、あったそうな。天女が降りてきて川で水浴びをしていた。男が通りかかり、木にかけてある飛衣(とびぎぬ)を隠してしまった。そして自分の妻になったら返してやるというので、天女は仕方なく男の妻になった。七年がたち、三人の子どもが生まれた。一番上の子がある日、末の子をおぶって飛び衣のありかを歌う子守歌を歌っていた。それを聞いた天女は喜んで、倉にあがり隠されていた飛衣を着て、三人の子を連れ天へ昇っていった。夫にも天に昇って来られるように書き置きをしてきたが、天女の親が男を気に入らず、次々仕事をいいつけた。天女の知恵で次々解決していったが、最後に冬瓜を横に切りなさいという嫁の忠告に従わず、男が親が言うように縦にきったため、そこから大水が出て男は流されてしまった。これが天の川の始まりだとさ。夫婦は日に年に一度だけ会うようになったとさ。

あもろうなぐ

奄美大島

奄美姑神話

昔、まだ奄美の島が海の上を漂っていた頃の話。神様は天上からクラゲのように漂うこの島を、アマミコ(女神)とシニレコ(男神)に、住みやすい島に作り変えよ」と命じた。二人の神は授けられた矛(ほこ)で漂っている島々をゆっくりかきまぜた。するとみるみる固まり島になった。二人の神は一番高い山(アマンデー)へ降り立った。次に天上の神から与えられた土や石で、立派な地面ができた。「草木を植え、美しい島にせよ」といわれてその通りにすると、木々が繁り、海の波を防ぎ、花や鳥の住む美しい豊かな島になった。これが奄美大島の始まり。

やがて二神は結婚し、三男三女を授かる。長男は国主の始祖となり、次男は按司(あじ)の始祖、三男は百姓の始祖、長女は国君(最高神女)の始祖、次女は祝女(村々の神女)となり、その後人間のいとなみが始まった。アマミコは天にのぼり、五穀の種子をもらってきて、人々に栽培方法や機織りや耕作を教えた。収穫したものをえて天地の神々を祭る行事(アラセツ)の始まりである。

沖永良部島

島建て神話

昔この国は島の北端を踏めば南があがり、南の端を踏めば北があがりゆらゆら揺れていたそうだ。そこで、島コーダ.国コーダの二人は神様に相談に行ったそうだ。神様は、「東の海岸に黒石を置き、西の岸には白石を置きなさい」といい、二人がそのようにすると、地揺れはおさまり、島の形ができたそうだ。人間をつくろうと神様に相談に行くと、「土で人の形をつくり、息を吹きかけなさい」と教えられ、人間ができたそうだ。子どもがつくれないのでまた神様に相談にいくと、イヒリ(男)の家は風上につくり、ウナリの(女)の家は風下につくりなさい」といわれ、そのようにするとこどもができた。食べ物は「ニラが島(宮)に行って、ムンダネ(物種)をもらってきなさい」といわれ、でかけたがウフヌシ(大王)に初穂祭りが終わってないからまだやれないと断られた。二人は稲の穂を盗みとって逃げ帰ろうとしたがみつかって倒され、死んでしまったそうだ。

帰ってこない二人が心配になった神様は使者をニラが島に派遣。使者が飲ませた薬のおかげで生き返った二人は島に帰った。顛末を聞いた神様はあらためて、ニラが島に行き、盗んだ稲をもとに戻すようにと諭し、そのようにすると、稲の初穂祭りを無事終わらせることができたので、稲穂をもらうことができたとか。それから沖永良部島は稲が豊かに実り、子孫も増えたと。

与論島

太陽の子

太陽が人間の女性に子どもを生ませたという話が奄美の島々に伝わっている。これはオモイマツガネの神話として奄美のユタ神の祭りの中で最も重要な伝承である。太陽神(テダクムガナシ)の話を紹介するしよう

太陽の子

むかし、あたんちゅかな(あったそうな)。奄美の島に世にも美しいオモイマツガネという娘がいた。島の男たちは輝くような美しさにいいよる勇気がなかった。ある日、娘が照りつける太陽の下で畑を耕していると急に閃光が走り、オモイマツガネの体のなかに入ってきた。倒れてしまい、気がつくと家で寝かされていた。日が経ち娘のお腹は少しずつ大きくなっていったが、誰の子か本人も覚えがなかった。

十二ヶ月後、ようやく男児が誕生、カネノマタラベと名付けられ、何事にも優れてすくすくと育った。ある日、自分の父が太陽神(テダクムガナシ)と知りそれを確かめようと天に昇ったが、神は覚えはないと大変怒り、鬼に喰わせよと命じた。鬼が食べようとすると、あまりの眩しさに近寄ることもできず、ついにはひざまづいて拝み出した。家来からこの話を聞いた神は、ようやく認め、親子に食べ物を与えるから地上で待つように伝える。カネノマタラベが地上におりて牛飼いをしていると、天から御草子(占いの書物)が降りてきて、彼は易者の始まりとなり、母はユタ(巫女)の始まりとなったそうな。

イラスト/榊原のぞみ・工作倶楽部

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