物語の島

奄美の民話・世界の民話

奄美の島々にはさまざまな民話(神話、伝説、昔話)、民謡、わらべうた、ことわざなどが伝わっている。民話は祖先からの贈り物。親から子へ子から孫へ語り継いでいきたい。

竜宮伝説

亀があらわれて竜宮へ行った若者が、竜宮の嫁をもらってくるという「竜宮伝説]は中国や韓国からの影響があり、奄美各地に伝承されている神話的要素をもった話である。奄美の人々は海のかなたに神のすむ幸せの国、ネリヤカナヤがあると信じていた。そこはまた死者の魂のいく国であり、人々に富をもたらす国でもある。このネリヤカナヤを竜宮と呼ぶ人々もいるが、これはネリヤカナヤ思想が中国、日本の竜宮思想と似ているからだろう。島の人たちは今でもネリヤカナヤ(竜宮)をこよなく思慕している。

「天人女房」は、七夕の起源譚としてアジア全域で語られている羽衣伝説だ。水浴中の天女の衣を奪って天女を妻にするモチーフは、古くインド起源とも考えられているが、インドネシア、韓国、中国、ヨーロッパとも共通している。喜界島では、天降(てんこう)神社があり、子守歌にも歌われ、徳之島では歌いながら語る「天降口説(あもろくどき)」となっている。

天人女房

奄美の民話絵本『さるのいきぎも』(奄美民話の会)

「猿の生き肝」は、病にかかった竜宮の姫に猿の生き肝が効くというので亀が猿を騙して竜宮に連れていく話だが、この源流が約二千年前のインドの古書に収められている。仏教とともに日本に伝来し、ネリヤ思想がある奄美で広く語られるようになった。タイ、中国、韓国とも共通している。

奄美の民話絵本『けんむんのがぶとり』(奄美民話の会)

ケンムンは、火、水、木、臭い、音の怪をもつ奄美の代表的な妖怪で主に奄美や徳之島で語られ、近いものとして喜界島のガナオー、沖永良部島のヒーヌムン、与論島のハタパキマンジャイ、沖縄のキジムナーがよく知られている。また、韓国のトッケビというおばけは、火の玉になって山野を駆け巡ったり、相撲が好きで人間に挑んだり、いたずらや危害を加えたりする姿は、奄美のケンムンとよく似ている。

その他、喜界島の民話『七羽の白鳥』は、グリム童話の『六羽の白鳥』と類似しているし、沖永良部島の『灰坊』は、グリム童話の『シンデレラ』の奄美版ともいえる。奄美の民話にはグリム童話に共通する話も多くある。長い年月の間に世界中を旅して、奄美にそしてヨーロッパに語り継がれているのだろう。

喜界島の民話『七羽の白鳥』

イラスト/榊原のぞみ・工作倶楽部

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