独特の文化

奄美の舟

海に囲まれ険しい山々が連なる奄美では、かつては、舟が集落と集落を往来する大切な交通手段であり、黒潮にのって交流し、文化の橋渡しをする役割も担っていた。舟を例えた教訓の島唄も唄われている。

板を張り合わせた板付け舟は、奄美に古くから伝わる舟だ。この船体に沖縄のサバニの船首構造をつけて改造されたアイノコ舟は、大正時代、海老原万吉氏により考案された。現存のアイノコ舟は、伝承者坪山豊によって丹精込めて造られてきたけれども、設計図がなく、材料の木材の選定からはじまる舟づくりは、現在では担い手が非常に少なくなっているのが現状である。

板付け舟/舟底は平板で幅は広く、舟首と舟尾の形態は一様なため、安定性があり、前後左右の移動が可能。人や荷物も多く載せられ、交通手段として活用された。丸木舟の次に造られた奄美独特の舟。

アイノコ舟の製造工程/張り合わせた板の間にノコギリが障害もなく均等に通るのを確認。乾燥している木は水に入ると膨張し、寸分たがわず組み合うため水漏れはしない。

アイノコ舟/板付け舟の舟体にサバニ(沖縄の漁舟で波を切り、舟底が狭いため速く直進できる)の舟首構造を付けたもの。板付け舟とサバニの利点をあわせ、波乗りが良く安価なため、人々に愛された。

舟の図(『南島雑話』奄美市立奄美博物館所蔵)

写真・解説/ホライゾン編集室

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