独特の文化
サンゴの石垣
南西諸島では台風などによる防潮や防風のため、家屋の周囲に石垣をめぐらすところが多かった。今ではサンゴの採取は禁止され、サンゴの石垣の隙間にハブが潜むこともあって、ブロック壁などに変わっているが、サンゴの石垣は風通しがよく、自然と共生する先人たちの知恵が宿る文化といえるだろう。
特に喜界島は、石垣の風景が今でも多く残っている島として知られる。加工しやすいサンゴ石が豊富で、ハブが生息しないこともその要因だろう。
喜界島の石垣には様々な様式があり、海岸から採取したサンゴ礁をそのまま積み上げる野石積み式や、琉球文化のヒンプン(門の入り口中央奥に目隠しや魔除けのため建てられる仕切り)があるもの、また鹿児島の武家屋敷の影響を受けたといわれるサンゴ石を成型して隙間なく積む方式の石垣などがある。石垣は、防風防潮だけではなく、その屋敷のステータスシンボルにもなっていたようだ。
海沿いの阿伝集落では、今でも昔ながらのかなり高い石垣が集落に巡らされていて、自然と共生してきた文化的な景観として奄美群島国立公園のひとつに挙げられている。
そのほか、奄美大島の加計呂麻島や、請島、与路島でもサンゴの石垣が多く残る。与路島の石垣風景は平成20(2008年)度「島の宝100景(国土交通省)」に選定されている。
写真・解説/北島公一・ホライゾン編集室