奄美の海の生物たち

奄美群島のウミガメ

近年、奄美群島各地の沿岸では、若いアオウミガメの生息数が増加し、のんびりと海草を食む様子やサンゴの間でお昼寝している姿を観察するウミガメシュノーケリングが人気を集めている。

奄美群島で産卵するウミガメは、主にアカウミガメとアオウミガメで、奄美大島では稀にタイマイが産卵し、2002年には国内では唯一のオサガメの産卵記録がある。

アオウミガメ(写真/興 克樹) 英名:Green turtle 学名:Chelonia mydas
世界の大洋に広く分布。主な産卵地は熱帯海域に広く点在する。頭部や甲羅は黒みの強い濃緑色、腹面は白や淡黄色。若い個体は甲板が朝日模様。海藻や海草が主な食物でクラゲやサルパも食する。頭部は小さく、Tシャツ等のデザインになっているのは若いアオウミガメが多い。上陸時は前脚を左右同時に動かし足跡は左右対称で歩幅も短い。上陸時はアカウミガメより神経質なため産卵するまでは赤色ライトの使用も避け遠くから見守る必要がある。

北太平洋に生息するアカウミガメの産卵地は本州の宮城県、新潟県以南から南西諸島にかけての地域のみで、特に鹿児島県は産卵回数が多く、全国の6〜7割を占める。屋久島・種子島が一番多く、奄美群島も各島で産卵がみられる。孵化したアカウミガメの子ガメは太平洋を渡り、メキシコ沿岸で成長しながら日本近海に戻る。奄美大島での繁殖個体は、主に東シナ海の中央部で甲殻類や貝類等の餌を食べていることが明らかとなっている。

アカウミガメ(写真/興 克樹) 英名:Loggerhead turtle 学名:Caretta careta
世界の大洋に広く分布。北太平洋の唯一の産卵地は日本沿岸。頭部や甲羅は褐色で腹面は淡黄色。甲殻類や貝類を食べるため顎が発達し頭部が大きい。見た目はアオウミガメと比較すると厳(いか)つい怪獣のようである。上陸時は前足を左右交互に動かし足跡は左右非対称になる。繁殖期には母ガメは産卵地の沿岸の海底で休息し、尾の長いオス個体も交尾のため来遊する。上陸・産卵時には赤色ライトによる観察を推奨している。

アオウミガメの産卵北限は、主に屋久島・種子島、小笠原諸島以南で、奄美大島での繁殖個体は、九州や本州、伊豆諸島の沿岸で海藻・海草類を食べていることが明らかとなった。両種とも5月〜7月の繁殖期には、奄美群島沿岸で過ごす。毎年産卵回数の増減があるが、多い年には奄美群島全体で全国の1割となる約2000回の産卵があった。以前はアカウミガメの産卵が約6割と優占していたが、ここ数年は産卵回数が減少し、アオウミガメが優占種となっている。

温帯から亜熱帯海域で産卵するアカウミガメと亜熱帯から熱帯にかけて産卵するアオウミガメ。奄美群島は両種の産卵海域が交わる貴重な海域でもある。

アオウミガメが常時休んでいる与論島のポイント(写真/垣内信雄)

アカウミガメの産卵(写真/浜田太)

アオウミガメ

アカウミガメ

イラスト/大屋 勝樹

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