奄美の海の生物たち
奄美群島のウミガメ
近年、奄美群島各地の沿岸では、若いアオウミガメの生息数が増加し、のんびりと海草を食む様子やサンゴの間でお昼寝している姿を観察するウミガメシュノーケリングが人気を集めている。
奄美群島で産卵するウミガメは、主にアカウミガメとアオウミガメで、奄美大島では稀にタイマイが産卵し、2002年には国内では唯一のオサガメの産卵記録がある。
北太平洋に生息するアカウミガメの産卵地は本州の宮城県、新潟県以南から南西諸島にかけての地域のみで、特に鹿児島県は産卵回数が多く、全国の6〜7割を占める。屋久島・種子島が一番多く、奄美群島も各島で産卵がみられる。孵化したアカウミガメの子ガメは太平洋を渡り、メキシコ沿岸で成長しながら日本近海に戻る。奄美大島での繁殖個体は、主に東シナ海の中央部で甲殻類や貝類等の餌を食べていることが明らかとなっている。
アオウミガメの産卵北限は、主に屋久島・種子島、小笠原諸島以南で、奄美大島での繁殖個体は、九州や本州、伊豆諸島の沿岸で海藻・海草類を食べていることが明らかとなった。両種とも5月〜7月の繁殖期には、奄美群島沿岸で過ごす。毎年産卵回数の増減があるが、多い年には奄美群島全体で全国の1割となる約2000回の産卵があった。以前はアカウミガメの産卵が約6割と優占していたが、ここ数年は産卵回数が減少し、アオウミガメが優占種となっている。
温帯から亜熱帯海域で産卵するアカウミガメと亜熱帯から熱帯にかけて産卵するアオウミガメ。奄美群島は両種の産卵海域が交わる貴重な海域でもある。
イラスト/大屋 勝樹