奄美の海の生物たち

奄美群島の貝

奄美群島は貝類の宝庫

地球上に棲む貝の種類はおよそ11万種類。そのうち日本産が1万種のなかで、奄美近海種は約3,000種ともいわれている。

日本列島の南岸には黒潮暖流が流れていて、沖縄・奄美は黒潮の強い影響を受けるため、奄美以南は熱帯海域とされている。この海域には熱帯性魚類とともに熱帯性貝類も多く生息する。

解説/重田弘雄(1935−2020 元奄美の自然を考える会)

遺跡から出土する貝たち

奄美群島の環礁でよく観察できるイモガイは約50種類ほどだが、遺跡から出土するのはアンボンクロザメガイが最も重宝がられていたようだ。

縄文時代併行期の遺跡からは、オオツタノハガイ、オオべッコウガサガイ、タカラガイ、シャコガイ、ヤコウガイ、ゴホウラガイなどが出土、これらは装飾品として貝文化を発展させ、九州産の黒曜石などとの交易品としても注目されている。

弥生時代併行期には、腕輪に利用したゴホウラガイやイモガイなどが主流。力を誇示する威信財としての利用が考えられる。

ヤコウガイは奄美大島のマツノト遺跡やフワガネク遺跡などで大量に出土しているが、中国大陸や日本との交易品として利用されたのではないかと注目されている。

解説/中山清美(1951-2016 元奄美市博物館館長)

アンボンクロザメガイ/先史・古代人が装飾品に多く利用した大型貝で奄美、沖縄諸島に多く生息。(奄美市歴史民俗資料館)

ゴホウラガイ/奄美大島以南の熱帯西太平洋からインド洋に分布。奄美では弥生時代併行期に腕輪として利用された。(奄美市歴史民俗資料館)

ヤコウガイ/奄美諸島以南、熱帯太平洋域に分布。平安時代の大和において信仰のシンボルとして崇められたことから、平安貴族と南島産ヤコウガイの関係が注目されている。(奄美市歴史民俗資料館)

スイジガイ/ツノ状の突起が6本あり、これを漢字の「水」の文字に例えたところから、火難除けや魔除けとされた。

エンマノホネガイ/国内では奄美大島のみ分布が確認され、希少性が高いことで知られるホネガイの一種。長く荒々しいとげの様子から「閻魔大王」にちなんで名付けられたという。

オキナエビスガイ類/生きた化石といわれ、水深100メートル以深に生息。世界で26種・亜種が確認されており、日本で7種、そのうち奄美近海で4種(リュウグウオキナエビスガイ、コシダカオキナエビスガイ、ベニオキナエビスガイ、ゴトウオキナエビスガイ)が記録されている。

写真/奄美市歴史民俗資料館

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