奄美の海の生物たち
奄美の海の恵みに感謝(エッセイ)
森に目立った狩猟動物がいない奄美では、昔から海に糧を求めてきた。奄美の先人たちはこの天からの恵みである海の幸で暮らす中から、貝採りやタコ採り、イザリ、一本釣り、サワラ突き、追い込み漁などいろいろな漁法を生み出し、道具や舟の考案、改良などさまざまな文化を今に伝えている。
海の沖では、魚を釣ったり突いたりする。磯の岩場やサンゴ礁は「海の畑」と呼ばれ、人々は必要なときに必要な分だけ海藻を採り、利用してきた。
1960年代まで奄美群島の海岸付近では、ホンダワラなどの海藻が茂っていて、海の生物たちの栄養源や生活の場となっていた。またこれらは人々の食材となり、台風で打ち上げられたものは畑の肥料にもなっていた。
海に生かされ、海を頼りに生きてきた奄美の人々は、海を救いの根元としてとらえてきたのだ。陸の生物も海の彼方の神がもたらすものとされ、こうしたことから、海の彼方には豊饒をもたらす神の国があると信じられてきたのである。これが奄美のネリヤカナヤ信仰だ。
「山が泣けば川が怒り、川が怒れば海が痩せる」という言葉のとおり、森と川、海の生態系は繋がっている。海の幸を豊かにするには、森を大切にしなければならない。
写真/ホライゾン編集室