奄美大島の森/動物

アマミノクロウサギの子育てを撮影

1986年7月の夕闇のなか、僕は初めて、「生きた化石」といわれていたアマミノクロウサギに出会った。金作原の林道で、ライトに浮かんだその目は、ルビー色をしていた。鳥肌がたつほど感動した僕は、その後、夜行性で警戒心が強く生態がほとんど知られていなかったアマミノクロウサギの姿を撮影しようと、森の奥深くへ分け入るようになった。

ウサギ道を辿り、半年かけて巣穴を発見。出入りする彼らの姿を捉えようと、無人の踏み板式撮影装置を開発した。カメラをセットし、翌日確認するとクロウサギの姿が映し出されていた。その後、体温で感熱する装置を開発。雨や湿気から機器を保護するため、防水加工も施した。

湿潤な亜熱帯の原生林を歩いているうちに、森の多様な豊かさこそがアマミノクロウサギを太古から守ってきた母体であることに気がついた。そして森の血液ともいえる水が植物を豊かに育て、四季にわたりクロウサギに食物を供給していること、さらに毒蛇ハブによって人や天敵から守られてきたのだということに気がついた。

別穴で子供を産み育てるという古老の話は聞いていたが、ある日、子育て用の巣穴を発見。辛抱強く観察を繰り返すうち、1996年にクロウサギの授乳シーンや子育てを捉えることに世界で初めて成功した。

観察記録によれば、母ウサギは2日に一度、夜間のほぼ同じ時刻に巣穴付近に来て、ピュイーと何度も鳴く。周りを警戒しながら巣穴に近づくと前脚と口で10分ほどかけて巣穴を掘る。巣穴のなかから子ウサギが現れると、愛おしむように顔を愛撫。その後、後脚だけで立ち上がり、腹を突き出すようにして子ウサギに授乳を始める。それは、わずか2〜3分の授乳であった。そして再び、掻き出した土を寄せ集め、20〜30分もかけて、しっかりと穴を塞いだのち、闇の森に帰って行くのである。

子ウサギは1匹の場合が多かったが2匹いたこともあった。巣立ちが近づくと子ウサギは自分で巣穴を開けられるようになり、やがて母ウサギの呼ぶ声に促され、巣穴を出ていくのだった。その後、母ウサギに森での生き方を教わり、親離れをしていく。繁殖行動は春と秋の年2回を確認した。

産後間もない子ウサギを土中の産室に残し、2日に一度授乳にやってくる母ウサギとそれをじっと待つ子ウサギ。闇夜のなかで切り広げられたこの子育てシーンは非常に衝撃的であった。

アマミノクロウサギの授乳映像

Child rearing of Amami rabbits – YouTube

(この映像は、ネイチャーズベストフォトグラファーアジア2017動画部門優秀賞を受賞した)

NATURES BEST PHOTOGRAHY ASIA 2017 VIDEO HIGHLY HONARRED

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