奄美大島の森/動物

奄美のハブを研究して40年(エッセイ)

研究所では、奄美・徳之島・沖縄・久米島などのハブを約30匹飼育。これらの島々でハブがどのように隔離進化したのかをハブ毒の成分から検証してきた。

獣医になるつもりがあっという間に奄美への赴任が決まり、被害が甚大な奄美のハブと対策を研究してきた。鹿児島県は明治13年からハブ撲滅の国庫補助を申請し、ハブを買い上げ、明治35年からはハブの治療血清の研究が行われた。昭和40年にハブ咬症(こうしょう)の予防ワクチン(ハブトキソイド)が世界で初めて沢井芳男らにより開発され、現在に至っている。これらの対処療法の進歩や輸送手段、交通網の改善により、亡くなる人は激減した。

ハブの祖先は奄美の島々が中国大陸とつながっていた時期(1000万年前頃)に渡り住んだ。その後大陸から切り離され島ごとに分化した。

奄美ではハブを森の番人とか神とする信仰がある。ハブは人間を含む侵入者を拒み、森の生態系の頂点に立ってきた。つまり奄美の自然や種の保全をしてきたともいえる。ハブと同じ森に住むアマミノクロウサギやアマミトゲネズミなどの小型の哺乳類は、ハブの恐ろしさを知り、それをかわす習性を身につけている。

ハブとこれを取り巻く生物たちを調査していくうち、奄美ほど興味深い地は他にないということが分かった。研究テーマは多い。

アマミノクロウサギの巣穴からハブが出てきて後、クロウサギが巣穴から顔を出した。共存しているのだろうか。

高いジャンプ力で敵の攻撃をかわすアマミトゲネズミ

写真/浜田太

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