奄美大島の森/動物
野鳥の島、奄美(エッセイ)
奄美群島の鳥類の特徴といえば、この地域にしかいない数の少ない種、つまり固有種や希少種のことがまず思い浮かぶ。ルリカケスやオオトラツグミなど、世界でここにしかいない鳥がいるのは、確かにすばらしいことだ。けれど、もっと身近で顕著な特徴は、なんといっても鳥の数が圧倒的に多い、ということだろう。「鳥影が濃い」とでもいうのか、とにかくいろんな鳥が数多く見られる点が、この地域の鳥類に関する大きな特色だ。本州などでは珍鳥扱いの夏鳥リュウキュウアカショウビンも、絶滅危惧種の冬鳥サシバも、ここではごく普通に見られることに、訪れる人は驚くのではないだろうか。
鳥の数が多いということは、食べ物が多く鳥にとって住みやすい環境が整っていることを意味する。逆に、その鳥を食べる生き物にとっても好適な環境であるといえる。身近な鳥の姿が少なくなるとき、それはもしかしたら環境に大きな変化が生じているときなのかもしれない。固有種や希少種を守るのはもちろん大切だ。しかし、たくさんいるごく普通の生き物にも同時に目を配ることこそが、自然環境を守る第一歩であると思う。
写真/浜田太